遺言の実際…遺言能力

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遺言の能力…実際には



意思能力がないのに遺言書がつくれるのか。微妙な判定に持ち込まれます。そしてそれは公正証書遺言でも問題になります。

実際の裁判所の判断をみてみましょう。

■亡道雄(明治36年4月6日生)は,本件遺言書が作成された昭和56年12月11日当時病気勝ちで寝たり起きたりの状態ではあったが,なお三女……の嫁ぎ先が倒産したことについて同女の身上相談にもあずかるなど事理を弁識することのできる一応の理解力,判断力を有しており,本件遺言書の作成にあたっても,控訴人にかねて贈与すると約束していた岸和田市○○○町字○○○×××番×の土地を他へ処分してしまったため控訴人から代りの土地を所望されていたところから,さきに公正証書遺言により披控訴人に相続させることにしていた本件土地をあらためてその代償として控訴人に相続させる意思のもとに,控訴人及び被控訴人の面前においてメモ用紙にボールペンで「六の坪五十六番地は……やろ」と自書したうえ署名しその名下に指印したと認められ,また,本件遺言書における亡道雄の氏名が「……通雄」と表示され,日附の元号の「昭和」が「正和」と記載されていることは当事者間に争いがなく,前掲乙第4号証によれば,本件遺言書の亡道雄の筆勢は弱く字体もかなり乱れていることが認められるが,当審証人……の証言及び原審における控訴人本人尋問の結果によれば,亡道雄は生前自分の名前を「通雄」と表示することもあったと認められること,亡道雄は当時80歳に近い老人であったことを勘案すると,これらの事実も未だ前記認定を左右するに足りる資料とはなし難い。(大阪高判・昭和60年12月11日)

■本件書面が作成された昭和60年3月31日当時…は,86才で,前年の8月から前立腺がんの治療のため入,退院をくり返していたこと,本件書面作成の日から38日後である同年5月8日には,右の病気のため死亡したことは当事者間に争いがない。そして,…は,78才の頃熊本市の……宅に遊びに行った際,1人で外出し,帰り途がわからなくなって郵便局員に連れ帰ってもらうようなことがあったり,日記を書いている途中で妻…に「今日はどこへ行ったかな」とか「今日何をしたかな」などと自分の行動について尋ねるようなことがあったこと,入院中パジャマにスリッパのまま医師の許可を得ずに病院を抜け出して自宅に帰ったりしたこともあったことが認められる。これらの点から,1審原告らは,宏は判断力,自己規制力を失い,精神能力が著しく衰退し,老人性痴呆,精神の幼児化が進み,本件書面作成当時,その意味,効果を理解する意思能力を失っていたと主張する。しかし,…の主治医であった○○病院の○○泌尿器科医長は,当時宏は,「遺言書作成の精神的能力は有していたと思われる。」その理由として「言語状態もしっかりしていること,全身状態もよくなってきたため,4月1日退院と話したのが3月29日であり,その後に退院準備のため外泊を許可した。」と裁判所の調査嘱託に回答し,同旨の証言もしていること(原審における調査嘱託の結果,原審における証人……の証言),3月30日に帰宅した際,宏は,自己名義の預金通帳を見て,毎月1回8万円が払い戻されているはずであるのに,3月に限り25日と29日の2回それぞれ8万円が払い戻されているのを発見し,1審被告にその理由をただした結果,間違って払い戻されたことが判明したこと(原審における1審被告本人の供述,原審における証人……の証言,乙第42号証の1ないし3)等に照らすと,…の精神的能力は当時さほど低下していなかったと考えられること,また本件書面は…が自ら書いたものであり,その内容は簡明なもので,その意味,効果を理解するためにそれほど高度の意思能力を必要とするものではないことからすれば,1審原告らの主張は,採用できない。(東京高判・平成4年9月29日)

■昭和47年頃から昭和49年頃,被相続人には体のふらつき,発語状態不良,字が書きにくいなどという体調不全があったことは認められるが,医師の審問などにも答え雑誌を読むなどしており,判断能力に欠陥があったことを認めることができない,として自筆遺言証書が判断能力のある遺言者の自筆により作成された有効なものと認められる(広島高判・昭和60年5月31日)

■遺言書作成前後の状況を詳細に認定したうえ,遺言者の病気の経過や症状からみて,遺言書作成当時,遺言者にはその内容及び効果を理解して遺言書を書く能力がなかった(東京地判・平成5年2月25日)

■被相続人は,本件遺言作成当時中等度以上の痴呆症の状態にあった。したがって,当時の被相続人の精神能力は,精神医学上,一般的に事物の是非の判断能力及びその能力に従って行動する能力は高度に障害されていた。被相続人は,公証人からの質問に対し,その意味を理解しないまま,受動的に返事をし,財産処分の意味やそれが及ぼす影響についても理解できず,土地を特定して認識することも不可能な精神状態であったことになるから,本件遺言の意味を理解し,その結果を弁識判断する能力はなかったと推認できる。…次に,被相続人の本件遺言当時の言動等について検討するに,被相続人の精神医学上に精神能力から推認される結論を覆して,被相続人に本件遺言をなすに足りる意思能力があったと窺わせる事実は認められず,かえって,被相続人において本件遺言内容自体を理解していなかったことを推認させる事実が認められるのであって,これらの点からも,被相続人は,本件遺言作成当時,本件遺言をなすに足りる意思能力を有していなかったと推認するのが相当である(宮崎地裁日南支部判・平成5年3月30日)

■禁治産宣告を受けていた遺言者が遺言当時,遺言能力を欠く状態であったか否かにつき・痴呆をアルツハイマー型と多発性脳梗塞起因型に分類し,後者は人格のすべての面で知的退行現象を示すものではなく,特定の部分は抜け落ちるものの・その他の部分は比較的その人らしさが保たれる、いわゆる「まだら痴呆」の状態を呈することが多いとしたうえで,本件遺言者は後者の類型に当たるとしたうえで、遺言時の遺言能力について,公証人や医師との対話状況を具体的かつ詳細に検討を加え,知的能力は正常人よりは劣るものの物事の善悪を判断し,それに対応した行動をとる程度には達していたと解され,これに・全財産を妻に遺贈するとの遺言内容が比較的単純なものであることをも考慮すると,遺言者は・法律的な側面を含めてその意味を認識していたと認めるのが相当である(名古屋高判・平成9年5月26日)。

■76歳の女性の日常生活・入院生活の状況,医療を受けていた状況,精神知能検査の結果及び診断などにつき事実認定し,女性の意思能力について関係者の見方が異なるものの,検査結果(昭和63年8月当時)痴呆は高度異常に属するもので,加齢が原因であるから,平成元年12月当時も同様であったとみられること,本件遺言書自体も重要部分につき趣旨不明であること等を総合すると遺言を行う意思能力を欠いており,女性がした自筆証書遺言は無効と解すべきである(東京地判・平成10年6月12日)



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